コトバにならない、だけどとても大切なこと。

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夏休みの9月。映画「誰も知らない」を見てきました。

コトバにならない、だけどとても重く、大切なこと。


子どもは生きていく。
どこにでもある町の中で、じわじわと押し寄せる荒廃と絶望の中で、それでも次の日を生きてしまう。

生きられてしまう現実。

その日の明かりの中で、夜の暗闇の中で、
子どもたちは砂のように小さく、強く光っていた。

何度も瞬くそのひとつひとつの瞬間が、表情が、横たわる記憶を呼び覚ましていく。
あの日のこと。いつかの日のこと。

そして大切なことを知る。
それはコトバにしようとすると、カタチにならない、
だけど今のこの町で生きていく上で、
必ず欠いてはいけないことだと思う。

この映画が描きたかったものは、

『危機を偶然乗り越えた先に起こる不可避の喪失と、さらにその先にある、これも決して甘いつもりはない「可能性」について。僕がみつめたかったのは、その「可能性」の中にある――それでも生きていくであろうたくましさと、生きられてしまうだろう、不幸とは呼びたくない現実だったと思う』         

 ―是枝監督 「director's note」より

まさにそう。子どもは生きていく。この、今の環境の中で忘れられ、町の中で見放されながらも、家の中で、公園で、遊び、笑い、食べて、また怪我をして、時にはそのいのちをなくしながらも、子どもはその目と、心と、体を持って、次の日を生きていく。

『こどもたちはとても柔軟な適応能力をもっている。戦後の荒廃した都市でさえ遊びを発見して明るく生きてゆける。それは、人間という種が生き残るために獲得した、他の生物と共通する能力に違いない。だから、多くの人間は子供時代には、環境と一体化して屈託ない生命を輝かせることができる。』
―My Place: http://myplace.mond.jp/

映画の中の子どもたちは、薄明るい昼の日の中で、暗闇の中で、ちいさく、そして強く光っていたと思う。あくまで淡々とした情景が、子どもの笑顔が続く映像の中で、それでも心に届いてくるものは、重く、言葉にならない大切なことだったと思う。


町の中で生きるということ。生き延びるということ。
絶望し、苛立ち、追い詰められて、悲しみに襲われ、
それでも、生きようとすること。
その目で見つけた小さな光に手をのばして、何度もつかみそこねながら、手の中につかんだ、ちいさな光をにぎって生きていく。

どこにも救いのない、絶望の映画だと書いている人もいた。
大人の無責任さや社会の冷たさを批判する人もいた。

だけど、私はこの映画をそんなふうに表さない。
キュッキュサンダルの、キュー・・・という切ない音がして、そのサンダルについていたクマの絵が写ったシーンで、私はいつもはぐっとこらえられていた涙をふいに流してしまったけど、この映画を、ぜったい泣けるよ、なんて紹介はしない。

この先就職して働いても、きっと子どもを産んで育てたいね。
ここ1・2年で、友達とそういう話をよくするようになった。

スクリーンに映る、子どもたちの笑顔はほんものだった。そこに映る人は、ものは、子どもを包むやさしさをふくんでいた。その素直な笑顔を見て改めて、将来は子どもを育てよう、と思った。そしてシングル・マザーでもいいなんて安易に考えずに、ちゃんと育てようと思った。

映画の後半になると、私は救いを求めた。だれかが現れて、この状況をどうにかしてくれないかと、心の中で願っていた。たぶんそうはならないだろうとどこかで思いながら。

子どもが生きるにはつらい時代だという人がいる。こんな時代に生まれるのは、自分の犠牲になるのはかわいそうだから、子どもは持たないという人がいる。

私は、それでも生きていく子どもたちが、もっと、生きられるようにしたいと思う。その子どもの笑顔が、強く光る瞬間を、見逃さずに、見守っていたいと思う。そして、その子が抱きしめてほしいと願う時に、ちゃんと手をのばして抱きしめてあげられる位置にいたい。寄り添うことができないのなら、その心を知っているということだけでも、そっと伝えたい。

この映画をみんなに見てほしい、とはいえない。だけど、この映画から伝わってきた「コトバにならない、大切なこと」はすべての生きている人たちに知っていてほしいと、切に願う。

"誰も知らない" produced by Koreeda director
"kaeri-michi-no-yuuyake-hikouki-gumo"  photo by maya at Saidaiji, Okayama.
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by ekotoba | 2004-10-01 16:21 | いのちのこと。 | Trackback | Comments(2)
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Commented by ekotoba at 2005-01-26 01:22
はじめまして、レイです。
TBありがとうございました。
感激しております。

「コトバにならない、だけどとても大切なこと」
この言葉にすべて凝縮されていると思いました。
あなたのようになりたいです。
これからも、よろしくお願いします。


Posted by: Ray : October 1, 2004 02:56 AM

こちらこそ、TBありがとうございました!

裸足で街を歩いてみたレイさん、とてもいいなあ*と思いました。
お仕事中のことなのに、それを快く受け入れてくれた相手の方も素敵ですね(^^)

Posted by: maya : October 1, 2004 11:11 PM
Commented by ekotoba at 2005-01-26 01:22
ampを読ませて頂きました。
素敵な活動をなさっていますね。

こうしてお知り合いになれて、大変嬉しく思っています。

私がお会いした方は、IT関係のコンサルタントの方で、現在指導して頂いてます。
人との出会いを大切になさってます。

上のリンクで「パソコン困り事」をボランティアでされています。
私は初心者なので、沢山助けてもらいました。

私のお勧めのサイトです。

Posted by: レイ : October 2, 2004 01:52 AM

ampは一歩ずつ、ゆっくり進んでいる企画なんですが、
今日もひとり興味を持ってくれた人がメールをくれました*
こうやって今まで見えていなかった人のことが
いつかampの思いとつながって見えてくるのを体験できるのが、
スタッフの醍醐味のひとつと思ってがんばっています。
レイさんもいろんな人と出会いながら、お仕事をされてるんですね(^^)

Posted by: maya : October 3, 2004 10:17 PM
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