春の畑。
春、3月。卒業旅行で、おなじみの畑を訪れる。
私はそこで人と、畑と、暮らしに会う。
:おだんご:
「おだんご、つくってあげようか?」
今年4才になる女の子、風の言葉を聞いて、草を抜いていた私と友人は、「うんうん、作ってー。ありがとうー。」と答えながらもしばし考えた。畑の向こうに駆けて行く少女の姿を見ながら。・・・そういえば小さい頃はよく砂場でお団子作ったな、土にちょっと水を混ぜて、周りをさらさらの砂でお化粧して・・・泥のお団子だったら、どうやって食べるふりをしようか・・・
「はい、おだんご。」
そういって差し出されたのは、お米のつぶほどのちいさな草だった。ありがとうー、と言って友人は、ぱくっと口にいれた。私はびっくりして大丈夫?と聞いてから自分でも食べてみたけど、確かに苦くなかったし、青臭い感じもなく、味と言えるような味がほとんどなかった。あとからそれはオオイヌノフグリの先っぽの葉だと分かった。
小さく丸まっている。やさしい春の香り。
:畑へ:
畑へ行くとき、必ずノリとタマが着いてくる。畑に向かって、真っ直ぐに駆けて行く。
こっち、こっち、と先導して、道先案内人になる。畦道の途中で、ノリは時々振り返る。
私がちゃんと着いてきてるか、確かめるように。私がにんじんを抜いている間、ノリは少し離れたところで畦の上に横たわっている。時々畑の土の中に鼻をあてて、ふんふん、と音をさせている。たまさん(奥さん)曰く、それはモグラを追い払っているときらしい。
:ばんごはん:
ばんごはんをほとんど食べ終わった時。「このカレー、肉が入ってないんやけど、」たまさんがそう言うまで、私は気付かなかった。というより全く考えていなかった。カレー粉、にんじん、じゃがいも、たまねぎ、すりおろしたにんにくたっぷり。とろみはあっさり、圧力釜で炊いたふっくら玄米ごはんにかけて食べる。すごくシンプルに作ってるのに、なんて豊かな味なんだろう。土のエネルギーを食べてる。そう思った。自分が足を下ろした、その土の栄養でできた野菜。
:根っこ:
「うわぁ・・・すごい。すごい根っこ!!」やっとのことで抜いたにんじんの側面には、びっしり、白いきらきらした根っこが生えていた。ふわふわして、細くて、いかにも水が通ってそうに透明。にんじんのそんな様子は、見たことがなかった。それまで私が知っていたにんじんの根っこは、もっと少なくて、薄茶色で、硬くて、乾いていた。知らなかったにんじんの姿。
ところが風に見せたら、風はなんということもない、という感じで答えた。「じゃがいもも、たくさん根っこあるよー。」
風は畑へ行くのりさんの後ろを着いて行って、のりさんは風にたくさん見せたのだろう。じゃがいもの白い根っこも、芽を出したばかりの小さなにんじんの葉も、モグラがかじった跡も。そうしたら私はすごく風が豊かに思えた。たくさんの店が並ぶ町に住んでいる子よりも、テレビを見て、いろんなキャラクターの名前を知っている子よりも、自分の家の前で両親が作ったおいしい野菜を食べて大きくなり、4才にも満たないのに、畑のどこで、何の野菜がどんなふうに育つのかを知っている風の方が、何倍も豊かに感じた。
“haru-kaze.” photo by maya, March 2005 in Sasa-yama.
by ekotoba
| 2005-05-01 11:06
| エコトバ。
一葉の写真に、生活と自然のことばを添えて届けます。
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